皆様、こんにちは!!
bikeport新宿都庁前店の奈須野です。
ある日のことでした。
PEUGEOT PLATINUM MACH8にお乗りのお客様がご来店になりました。
お話を伺うと、自転車に乗ってペダルをこいでいると、時々するっするっと空転する、ということでした。
1 ところで、ペダリングをしても空転する場合には、原因がいくつか考えられます。
(1) まず、チェーンと、フロントチェーンリング、カセットスプロケットがうまく噛み合っていない場合です。
変速不良による歯飛びの場合は、がきっがきっという音になるため、今回はこのパターンではないと思われます。
(2) 次に、チェーンの摩耗、各歯の摩耗による歯滑りの可能性が考えられます。
わずかでも歯の抵抗、摩擦があるため、まさにするっするっという感じで歯が噛み合わない状態になります。
(3) なお、リアホイールのフリーボディ内部のラチェットが摩滅、壊れている場合にも空転現象が起きます。
現代のほとんどのスポーツバイクは、ペダリング時にはリアホイールにトルクがかかりますが、ペダリングをしない時はリアホイールが空転するようになっています。
これは、リアホイールが一方向のみに力が加わるよう、フリーボディ内部にツメ(ラチェット)が仕組まれているからです。
リアホイールが自転車の進行方向に回転している時はフリーボディ内部のラチェットが段差に引っかかりホイールにトルクをかけます。
逆回転をしている時は、ラチェットが段差を乗り越えてカチカチとフリーボディが空転するのです。
ラチェットが摩滅して引っかかることができなくなった場合は、ペダリングをした力が全く伝わらなくなるため、スカッスカッという感じの空転になります。
お客様のご説明からすると、今回はこの原因ではなさそうです。
(4) とはいえ、実際に試乗してチェックしてみますと、明らかにフロントチェーンリングが歯滑りを起こしています。
残念ながら、これはチェーンリングを交換しないと直りません。
2 (1) 今回の車体は、チェーンリングとクランクが一体になった削り出しの高級品です。
PEUGEOT PLATINUM MACH8はその名の通り、車体重量が8.9kgと、変速機能のついた折りたたみ自転車としては異例の軽さでありまして、そのために、重量のかさむクランクセットに特注品を使っているのです。
そのため、通常のロードバイク、クロスバイクのように、リングだけ交換する、ということができません。
当店は、PEUGEOTの正規取扱店であるため、このクランクセットを取り寄せることは可能ですが、お値段が決してお安く無いという欠点があります。
(2) さらに問題があります。
このPLATINUM MACH8のボトムブラケットは、ISISなのです。
ISIS?
ナニソレ、とお思いになる方がほとんどだと思います。
これは、スクウェアテーパーという、四角形の軸をしたBBでは剛性が足りない、チェーンラインが正確に出ないということで、一から新設計のもとBBを作り直そうという考えのもと、規格化されたBBです。
それが、このISISで、2000年ごろ、SHIMANO以外のサードパーティ、Chris King、Race Faceなどが中心になって開発しました。
同時期、SHIMANOでは似た設計思想のBBが、オクタリンクという商品名で展開されておりました。
オクタリンクはその名の通り、8つのスプラインがあるBBですが、ISISは10のスプラインがあります。
このISIS、品質は良いのですが、残念ながら現代では対応するクランクセットが豊富に流通しているとは言えません。
そのため、価格も高止まりになりがちです。
さらに、BBもスクウェアテーパーBBに比べれば安価なものが少ないのです。
3 (1) ううむ。。。
なんとか合理的な品質で、安価なパーツに換装ができないか、検討しました。
これは決してPEUGEOT PLATINUM MACH8の悪口ではありませんが、PEUGEOT PLATINUM MACH8はもともと走行性能、高剛性を追い求めるバイクではないと思われます。
むしろ軽量性、折りたたみ機構を含めたコンパクト性を売りとしている車体で、必ずしもISISである必要は無い、と考えます。
むしろ現在もっとも流通している規格に換装したほうが、メンテナンス性も上がり、乗り手にとって恩恵が増えると思われます。
そうだとすれば、やや先祖返りとも言えますが、スクウェアテーパーBB、安価に流通しているスクウェアテーパー用クランクセットに換装するのが、一番合理的と言えそうです。
どうしても最上の性能を追求したい!!という場合には、ホローテックIIのBB、クランクセットを使えば良いと思います。
そこで、今回は、SHIMANOのスクウェアテーパーBBと、チェーンガードのついたクランクセットを取り付けることに致しました。
チェーンガード付きにものを選んだのは、衣類の汚れ防止と、チェーン脱落防止のためです。
(2) なお、ボトムブラケットを換装する場合は、まず、ねじ切りの山の方向(BSAかイタリアンか)を確認します。
次に、シェル幅といってBBが格納されるパイプの横幅を確認します。
入門的なスポーツバイクのほとんどはBSA、シェル幅68mmと思われますが、高級ロードバイクの中には独自規格のものを採用しているものがありまして、猛烈に注意が必要です。
今回もBSA、シェル幅68mmでございました。
4 それでは、作業開始です!!
クランクセットを取り外します。
このクランクセット、削り出しで品質は悪くないのですが、軽量性を追求するためにアルミニウムで出来ています。
一枚歯のチェーンリングがアルミというのも、ある種、割り切っているといいますか、潔い設計でありますが、摩耗がとにかく激しいです。
贅沢なチェーンリング、クランクセットと言えましょう。
ボトムブラケットを取り外します。
取り外したボトムブラケットです。
ISIS規格のもので、前述しましたように、10のスプライン、線条があります。
シャフト内部は中空構造で、軽量化に貢献しています。
しかしながら、ISIS、オクタリンクともに、5年程度メインストリームであっただけで、残念ながらSHIMANOは完全にホローテックIIに移行致しました。
スクウェアテーパーBBを装着します。
クランクセットを装着します。
スチール製で、換装前に比べて重量はかさみますが、耐摩耗性は圧倒的に上です。
これで、今後数年は歯滑りが起こることは無いでしょう。
併せてブレーキレバーが曲がっていたので交換してほしい、というご依頼がありましたため、ブレーキレバーを換装しました。
パーツ代、交換工賃を含めて、¥14,960(税込)となりました。
本日はこのあたりで宜しいと存じます。
それでは、皆様、次回お会いするときまで、ごきげんようです!!
以上、bikeport新宿都庁前店の奈須野でした。
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