皆様、こんにちは!!
bikeport新宿都庁前店の奈須野です。
1 ご来店
ある日のことでした。
お客様がご来店になり、フレームをフルオーダーしたい、クラシックな雰囲気だけども、性能的には最新のパーツを使った、古くて新しいクロモリロードバイクを作りたい、とのお話を頂きました。
フルオーダー。
ロードバイク乗りであれば、一度は憧れる言葉です。
しかも、クロモリ!!
クロモリとは、スチールにクロムとモリブデンを添加した合金のことで、スチールよりも飛躍的に粘り、硬さがでる素材なのです。
だがしかし!!
現代でクロモリのロードバイクを展開しているブランドはほとんどありません。
オーナー様は、当店が開店当初からご贔屓にしてくださっているお客様で、すでに複数台の車体をオーバーホール、カスタマイズしている方でした。
どうしたものか。。。
しばし悩みまして、唯一の解決策に行き当たりました。
なんと、当店でもフレームのフルオーダーが可能なのです。
しかも、クロモリを選択可能です。
2 Panasonic Order System
当店はPanasonicの正規販売店で、Panasonicにはフレームオーダーという、今では珍しい仕組みが生き残っています。
「今では珍しい」などと書くと、なんとも他意があるように思われますが、現在のロードバイクはロードレースで勝つことを基本としながらも、徹底したコスト削減を追求する商品となりました。
そこで、モデル数、サイズ、カラーリングは極力減らし、同じ車体を大量に作って量産効果を高めていく、という仕組みが出来上がりました。
そのため、サイズ展開は4つあれば良い方で、3つというロードバイクも珍しくありません。
その3つの中で比較的ご自身に近いものを選択する。。。ということになる訳ですが、どうしても完全にはフィットしない、という無理がでてきます。
その場合には、サドルの位置、ステムの長さ等で微調整する、ということが当たり前になっています。
これは前述しましたように、やむを得ません。
昨今、ロードバイクが流行しているのは、20-30年前に比べて、圧倒的にお値段が下がったことによるでしょうし、そのためにはモデル数を減らして大量生産するしか無いのです。
しかし!!
それでは納得できん!!
という方も少数ながらおられます。
高コストでもいいから、自分が本当に気に入ったロードバイクに乗りたい、という方向けの商品、それがフルオーダーなのです。
3 多様な選択肢
Panasonicの創業者である、松下幸之助さんは、元自転車工であったという経歴から、Panasonicには自転車部門に対する熱意が他社よりも強くありまして、ゆえに、各社とも遥か昔に撤退したフルオーダーが今でも利用できるのです。
今回は、FRCCというクロモリロードバイクのフレームをオーダーすることに致しました。
フレームサイズは、なんと19段階から選択可能!!
これだけ細かく指定ができれば、身長、手足の長さなど、ご自身にぴったりのフレームが見つかります。
さらに、カラーリングは34色から選択可能!!
さらにさらに!!フレームとフロントフォークは異なる色に選択可能!!
さーらーにー!!
それぞれのお色はグロス(艶あり)、マット(艶消し)の選択が可能!!
まだまだカスタマイズ可能な項目があります。
ダウンチューブのPanasonicロゴは8パターンから選択可能です。
もはやこれだけで、何通りの選択肢があるのだ、という感じでありますが、フルオーダーならではの嬉しい特典、お気に入りの文字をフレームに入れることが可能です。
多くの方は、オーナー様のお名前にする、というところでしょうか。
書体は5種類、位置は2種類、カラーリングは2種類のから選択可能です。
これら膨大な組み合わせの中から、まさに自分ピッタリのフレームを注文することが可能なのです。
4 フレーム発注
今回は、FRCC、フレームサイズ500、ゴールドに致しました。
メインフレームとフロントフォークは同色に致しました。
Panasonicロゴは、もっとも基本的な形で、お色はブラックに。
オーナー様のお名前をトップチューブにブラックで、記入します。
オーナー様と複数回お話をして、お好みのパーツ、構成、お色などを伺っていきます。
基本的な方針はクラシックな雰囲気ながらも、最新のトレンド、技術を使うことにためらいは無い、というものでした。
そして、フロントは一枚(シングル)にしたい、とのことでありました。
お話を伺いながら、パーツ構成、選択をして、発注しました。
そして、Panasonicのフレームが、届きました!!
う、美しい。
価格は、¥121,000(税込)です。
(なお、本オーダーの直後に価格改定がございまして、2022年11月の価格は、¥143,000(税込)となっております)
5 作業開始
パーツが続々と届き、装着していきます。
(1) フェイシング
フルオーダーをしたフレームの場合、高級なフレームでは特に、塗装面が分厚く盛り上がってパーツがうまく装着できないことがあります。
今回もボトムブラケットの面取りが必要でありました。
丁寧に、平面に塗装を削っていきます。
(2) チェーンホイール、ボトムブラケット
クランクアームを装着します。
SHIMANO 105クランクアームに、米WULF TOOTHのチェーンリングを装着します。
今回は街乗りがメインで、軽めの36Tを選択しました。
SHIMANO 105を選んだのは、クランクアームとシャフトが一体化しており、高剛性を確保できること、ボトムブラケットも高剛性、耐久性の高いホローテックII規格が採用できるからです。
WULF TOOTHのチェーンリングはナローワイドと言われる、狭い歯と広い歯が交互に配置されておりまして、チェーンの食いつきが良くなるため、フロントディレイラーが無い車体であっても、チェーン落ちがしにくくなるのです。
チェーンリングを装着するにあたり、面白い現象が起きました。
通常であれば、チェーンリングは、クランクアームにすぽっと装着できるものですが、クランクアーム、チェーンリング共に精度が良すぎて、装着できるポイントが1つだけ、知恵の輪のようにして装着致しました。
クランクアームを装着します。
(3) ステム、ハンドルバー
ステムを装着します。
クラシックな雰囲気を出すために、デザインがシンプルで、仕上げも美しい、NITTO UI-75 ステム90mm 25.4 シルバーに致しました。
コラムスペーサーは標準でカーボンのものが添付されております。
ハンドバーは、これまたクラシックな雰囲気を出すために、NITTO ハンドルバー B105 AAに致しました。
バーの形はまあるい、昔ながらの形です。
(4) シフター
シフターは、Wレバーです。
残念ながら、SHIMANOは11速用Wレバーを生産しておりません。
しかし、サードパーティが今でも11速対応のWレバーを生産しておりまして、今回はそちらを使います。
DIA-COMPE ENE 11S SHIFTER シルバーを使います。
DIA-COMPEはフリクションタイプと称しておりますが、要するに摩擦があるだけで、無段階のシフターです。
現代の変速機は、カチッカチッと変速の段階が分かるものがほとんどで、インデックスという仕組みが採用されております。
しかし、このシフターには、インデックスは無いため、感覚的にワイヤーを操作することになります。
その分、動作が単純で、変速不良といったことが起きにくいという利点があります。
(5) シートポスト、サドル
シートポストを装着します。
シルバーで、シンプルなデザインのものを採用しました。
GIZA PRODUCTS SP-248D 27.2x350mm シルバーです。
サドルは、GIANT FLEET SLサドルに致しました。
私もプライベートで使用しているサドルで、フィット感、安定性に優れ、長時間のライドが楽です。
(6) ブレーキキャリパー
ブレーキキャリパーはSHIMANO 105のシルバーを装着します。
(7) スプロケット、リアディレイラー、ワイヤー
スプロケット、リアディレイラーもSHIMANO 105です。
ワイヤーを配線します。
左右にハンドバーを動かしてもハンドルの動きを阻害しないように、それでいて長すぎないように、調節します。
(8) ペダル
ペダル、トゥークリップ、ストラップを装着します。
ペダルは高品質で定評のある、三ヶ島のペダル シルヴァンロードです。
トゥークリップも同じく三ヶ島 ケージクリップです。
ストラップには、本革のものを採用しました。
GP W-5 シングル レザー トーストラップです。
(9) コラムカット
今回は、フレームオーダーということもあり、フロントフォークがカットされていません。
にゅいーんと非常に長い状態です。
これをお好みの長さにカットして使います。
オーナー様と打ち合わせをして、カットする長さを割り出します。
コラムをカットします。
カットしたコラムに、スターファングルナットを打ち込みます。
このナットが、トップキャップによって引っ張られることで、フロントフォークのガタが無くなります。
このくらいで良いでしょう。
(10) バーテープ
バーテープを巻きます。
GIANT STRATUS LITE3.0です。
6 完成
試乗チェックをして、完成です!!
やはり、国内の工場で、日本の職人さんが作っているだけはあり、細部の仕上がりのクオリティが違います。
パイプの接合、ラグの処理が極めて美しい、丁寧です。
量産型のフレームでは、こうはいかないでしょう。
最近はシルバー系のパーツが少なくなりました。
SHIMANO 105はその中でもシルバーのラインナップが残っている、数少ないモデルなのです。
105以上のキャリパーブレーキは本体の剛性感がまるで違います。
NITTOのステム。
良い味を出しています。
コラムスペーサー、トップキャップはカーボンです。
ハンドルバーの刻印が渋いです。
こちらもNITTO。
ブレーキレバーは、クラシックさを出すために、シンプルなレバーにしました。
PROMAX BL-253 SILです。
クランクアーム、チェーンリング、ペダル、トゥークリップ、ストラップです。
機能的にも、美観的にも、非常によろしいです。
リアディレイラーもシルバーにしました。
大手ブランドの完成車ではほとんど採用されないお色のため、新鮮味があります。
カセットスプロケットはSHIMANO 105、11-32Tです。
フロントがそこまで巨大ではないため、34Tまでは必要ないだろう、という判断です。
巨大なスプロケットは、低ギア比を実現してくれるため、ありがたいですが、その分、重量がかさみ、変速の速度、精度も落ちていきます。
そのため、可能な限り小さめのスプロケットが理想的なのです。
GIANT FLEET SLサドルです。
前述しましたが、私もお気に入りのサドルです。
中央部が大胆にカットされておりまして、要するに。。。痛くなりにくいです。
また、サドル内部には小さな粒子が詰まっているとのことで、不思議なフィット感があります。
仕上げ段階で、Wレバーは片側だけにしました。
フロントシングルのため、そもそも右レバーしか使いませんし、飾りとして左レバーをつけておくのも車体のシンプルさを損なうと考えたからです。
伝統的なPanasonicのロゴです。
前述しましたように、このロゴももう一種類のものに選択可能なのです。
トップチューブが水平な、いわゆるホリゾンタルフレームです。
今となっては珍しい形であります。
タイヤはMICHELIN Dynamic Classic 25Cです。
タイヤサイドを敢えて飴色にすることで、古風な雰囲気を出しています。
ホイールはGIANT PR2。
チューブレスレディ対応で、将来的にはチューブレスレディ化することも可能です。
今回のロードバイクは、クロモリ、ホリゾンタルフレームというクラシックな雰囲気を演出しながらも、細部を見ていくとフロントシングル、ナローワイドチェーンリング、ホローテックII、チューブレスレディ対応と最新のトレンド、技術も取り入れており、古くて新しいロードバイクとなっております。
フレーム代、パーツ代、工賃を含めて、¥322,754(税込)となりました。
他の誰とも違うロードバイクをお探しの方に、フルオーダーをおすすめ致します。
本日はこのあたりで宜しいと存じます。
それでは、皆様、次回お会いするときまで、ごきげんようです!!
以上、bikeport新宿都庁前店の奈須野でした。
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