新宿都庁前店 CANOVER カノーバークロスバイク / ドロップハンドル化

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皆様、こんにちは!!
bikeport新宿都庁前店の奈須野です。

ある日のことでした。
CANOVER カノーバーというブランドのクロスバイクにお乗りのお客様がご来店になり、ドロップハンドル化をしたい、とのお話を頂きました。

ところで、私どもは、基本的にはお客様のご要望に従って作業を承りますが、専門家の視点から疑問と思われる箇所についてはお客様の意図をお尋ねし、代案を申し上げることもあります。

CANOVER、もちろん私も存じております。
各種通販サイトさんで人気の自転車で、好意的な口コミも多い車体です。

しかし、どちらかと言えば価格重視のブランドで、UCIワールドチームに機材提供しているような(例えばGIANT、TREK、SPECIALIZED、MERIDA、CERVELO等々)性能追求を第一義に置いたバイクではないと思われます。

オーナー様に失礼にならないよう注意しながらも、率直に専門店としての意見を申し上げました。
ドロップハンドル化といえば、最低でも¥50,000はするカスタマイズです。
本車体に¥50,000のカスタマイズをするよりも、新しいロードバイクをご購入になるのはいかがですかと申し上げました。

しかし、お客様の強いご要望で、ドロップハンドル化をしたい、とのことでありましたから、想定される費用と期間をお伝えし、その中で最大限の努力をすることに致しました。
大切な人からもらった、使っていた等、第三者には分からない特別な事情があるのかもしれません。
これ以上の詮索は無用であると考え、必要なパーツ構成を考えていくことにしました。

車体は、フロント3段、リア7段です。
この構成で、現行SHIMANOのコンポーネントを選ぶとすれば、SHIMANO TOURNEYが該当します。
フロントディレイラー、リアディレイラーはそのままで互換性がありますし、ブレーキキャリパー(本体)もありがたいことにロードバイク用のものが装着されていたので、そのまま流用可能です。

(なお、余談になりますが、クロスバイクで多く採用されているVブレーキと、ロードバイクで採用されることの多いキャリパーブレーキは、設計思想が異なります。
Vブレーキは強い制動の確保、キャリパーブレーキはいかに繊細に制動力をコントロールするか、という点にあります。
そのため、Vブレーキ用レバーは、レバーを少し引いただけでも強いテコの原理が働き、ギュッと止まるように設計されています。
これに対してキャリパーブレーキ用レバーは、レバーを少し引いてもブレーキがわずかに動く程度で、微妙なスピードコントロールができるようにしてあります。

長々と申しましたが、結論を言えば、Vブレーキ用レバーでキャリパーブレーキを操作すると、ワイヤーを引きすぎてすぐにブレーキの初動ポイントが近すぎる、異様に遊びが少ない、という結果になります。
逆に、ロードバイク用ブレーキでVブレーキを引くと、ワイヤーの引き量が足りずにちっとも制動力が発揮できない、という現象が生じます。)

問題はハンドルバーでした。
装着されているハンドルバーのクランプ直径が25.4mmでした。
これ自体は悪いとは思いません。
エントリー向けのクロスバイクで良く採用されている直径です。

ステムをそのまま流用した場合、直径25.4mmのドロップハンドルを探さなければいけません。
しかし、ドロップハンドルの世界では、25.4mmというのはかなり少数派なのです。

さらに問題をややこしくしているのは、オーナー様がブラックのハンドルバーが良い、と強いご希望を出されたことでした。

直径25.4mmでブラックのドロップハンドルはさらに少数派になります。
ニットーが25.4mm ブラックのドロップハンドルを生産しておりますが、折からの経済混乱で在庫切れ、入荷時期は未定です。

どうしたものかと苦悩して、もうここは、現代主流の規格に変えていただく方が合理的、と判断致しました。

つまり、ロードバイクは基本的にレース志向です。
そのため、ほとんどの完成車は高速走行ができる、安定したコーナリングが確保できるといったメリットのある、直径31.8mm規格に移行済みなのです。
そのため、高品質、安価なハンドルバーは31.8mmのものばかり生産されているのです。

このように、ハンドルバーを31.8mmのものにすれば、いくらでも選択肢がありまして、価格も抑えることが可能です。
ハンドルバーを31.8mmのものにします。
よし、これでハンドルバー問題は解決しました。

次に問題となったのはステムです。

本車体のフロントフォークのコラム直径は1インチでした。
1インチ、ノーマルサイズと呼ばれているコラム経でありますが、名前はノーマルというものの、市場占有率では「ノーマル」ではありません。

現在のスポーツバイクの主流はオーバーサイズという1-1/8インチに移行済みなのです。
理由は、ハンドルバーと同様、太い直径の方が高剛性にでき、高速走行、コーナリング時に有利だからです。

ステムをハンドルバー直径31.8mm対応にものにした場合、100%と言って良いくらい、フロントフォークのコラム経はオーバーサイズ対応品になります。
規格の世代が同一時期のものだからです。
しかし、このままでは本車体のフロントフォークと直径が合いません。

そこで、ステムを現在主流のものに交換して、さらに、フロントフォークの規格をオーバーサイズに対応させるため、シムというスペーサーを間に入れることにしました。
これで、ステムも、ハンドルバーも現行主流のものに置き換えることができました。

必要なパーツを発注して、作業開始です。

ステムを交換します。
GIANT CONTACT STEM ¥3,300(税込)です。
お値段も控えめで、必要な性能は十分確保されています。

ハンドルバーを装着します。
GIANT CONTACT DROP ¥4,950(税込)です。
GIANTのロードバイクにも採用されているハンドルバーで、性能に不満は感じません。
形も極めてオーソドックスです。

STIレバーを装着します。

ワイヤーを通していきます。

アウターワイヤーを張ります。
触覚型STLレバーのアウターワイヤーは、このようにギリギリ触れるかな。。。というくらいが長すぎず、短すぎず、ハンドルコントロールもしやすくて良いでしょう。

ディレイラーにワイヤーを通していきます。

バーテープを巻きます。

完成です!!

SHIMANO TOURNEYは、SHIMANOコンポーネントで最もお安いパーツ群ではありますが、さすがSHIMANO、粗悪品という感じは全くしません。
レバーの質感、押し心地も良好ですし、よく見るとかつての触覚型STIレバーの上位機種と同じ金型を使って製造コストを下げているのでしょう。
形がそっくりです。