皆様、こんにちは!!
bikeport新宿都庁前店の奈須野です。
ある日のことでした。
電子メールでお問い合わせがあり、昔のCannondale ロードバイクがあるのだが、オーバーホールと同時にフラットバー化をすべきか、新しいクロスバイクを買うか、迷っている、とのことでした。
フラットバー化にはいくらかかるのか、というご質問で、使用するパーツ、車体の状態に大きく依存するので断定はできないが、概ね¥60,000以上になるでしょう、とお伝えしました。
そして、クロスバイクも年々進化しているから、あくまでも経済合理性を追求するのであれば、旧車体に¥60,000以上投入するよりも、新しいクロスバイクのほうが性能は上である、とお伝えしました。
しかし、20年近く前のビンテージモデルをフラットバー化して、颯爽と乗りこなしているほうが、おしゃれ度、愛着、珍しさ、オリジナルティなどで遥かに凌駕するでしょう、お客様が何を重視するかによって、結論が分かれる、とお伝えしました。
オーナー様はしばらく迷われていたようですが、¥60,000代で可能である、というお見積りを差し上げて、ご了承を得ました。
まず、車体の状態を確認します。
長期間、屋内保管をされていたようで、サビ等はほとんど無く、車体の保存状態は良好です。
今回はフラットバー化するため、ハンドルバー、STIレバーは無用になります。
これは珍しい機構です。
アウターチューブの途中に装着する、という、かつてDURA-ACEにのみ存在したインジケータです。
バーテープ、ワイヤーを除去します。
今回は、オーバーホールも承っているため、ヘッド分解をします。
いかに屋内保管をしていたとはいえ、20年近く時が経っているため、やはりベアリング部分の動きはよろしくありませんでした。
グリスが劣化、硬化しています。
クリーニングをして、を新しいSHIMANOプレミアムグリスを充填します。
ボトムブラケットも分解、クリーニングをします。
ハンドルバーを装着します。
クロスバイクに採用される、一般的なフラットバーです。
今回の難門である、シフターです。
フラットバー化するにあたって、最大の難関、間違いをしがちなのは、シフターの選択です。
今回はULTEGRA 10速が搭載されています。
現行で、合理的な値段で新品のシフターを選ぶとすれば、何を選出すべきでしょう。
まず、基本的に、ロードバイク系のコンポーネントと、MTB系のコンポーネントは、ディレイラー、シフターの互換性がありません。
MTB系のコンポーネントは動作を大きくさせるために、ワイヤーの引き量が大きくなっており、ロードバイク系コンポーネントと引き量が違うからです。
そのため、ロードバイク系ディレイラーに対して、安直にMTB系のシフターを装着すると、うまく変速できません。
変速したり、しなかったり、およそ実用性がありません。
つまり、現行のDEORE10速のシフターを装着しても、うまく動かない、ということです。
次に、世代間の問題です。
変速数があっていたとしても、コンポーネントの世代が異なると互換性が無く、うまく動作しません。
ここでは、代表的な10速についてだけ述べます。
DURA-ACEであれば、10速の時代は、2003年から2012年と結構長かったのです。
105であれば、2005年から2015年までと、少し前までは10速がまだまだ現役でした。
しかし!!
DURA-ACEは2012年に11速化を果たし、その時に大きな断絶が生じました。
今までのシフターとワイヤーの引き量を変化させたのです。
そのため、11速と10速には互換性が失われました。
お話は少し遡りますが、2011年、TIAGRAも10速化されました。
4600系というモデルです。
そして、時が過ぎ、2015年、新型のTIAGRA 10速 4700系が発表されました。
現在、単独の組み合わせでロードバイク系、10速のフラットバー用シフターを選ぶとすれば、TIAGRA 4700系を選ぶことになるでしょう。
しかし!!
今回は世代を混在させたコンポーネントを動かす必要があります。
それぞれの年代に着目してほしいのです。
2011年 TIAGRA 4600系 10速化
2012年 DURA-ACE 11速化
2015年 105 11速化
2015年 新TIAGRA 4700系 10速
ここで着目してほしいのは、2011年の段階では、DURA-ACEもULTEGRAも105も10速の時代だったのです。
そのため、当然ながら、TIAGRA 4600系の10速は上位コンポーネントとも互換性がありました。
ところで、SHIMANOがコンポーネントに互換性を持たせているのは、(私の個人的な推測ですが)、消費者に部分的にせよ上位モデルへの移行をしやすくさせて、消費を喚起させる、という目的があると思われます。
スポーツバイクは消耗品のカタマリで、いずれパーツを交換しなければいけなくなります。
その際に、どうせ交換するのだから、ついでにアップグレードしようかな。。。と消費者に思わせる仕組みが必要なのです。
コンポーネント一式を交換するのは費用がかかるけど、一部分のアップグレードならそれほどでもない。
これが、SHIMANOがパーツに幅広い互換性を持たせている理由と推察します。
そして、2015年の時点では、すでに上位コンポーネントは11速に移行済みでした。
そのため、2015年に発表された下位コンポーネントであるTIAGRA 10速に、わざわざ過去の上位モデル10速との互換性を持たせる必要がなくなった、アップグレードしたいのであれば11速の世界にまるごと移行してほしい、とSHIMANOが判断したのだと思われます。
こうして、TIAGRA 4700系は従来の10速コンポーネントとの互換性が失われたのです(と推察します)。
長々と申しましたが、結論として、今回は、10速 ULTEGRAですから、TIAGRA 4600系を合わせるのがよろしい、ということになります。
いまだに10速 フラットバー用シフターの需要は旺盛なようで、すこし調べればTIAGRA 4600系の新品を入手することが可能です。
TIAGRA 4600系のシフターを装着して、ドキドキしながら動作確認します。
成功です!!
グリップには、Cannodaleが展開しているブランドである、fabricから、ポップなお色のものを装着致しました。
ワイヤーを張り替え、全体のクリーニング、ガラスコーティングをして、完成です!!
フレームがフルカーボンであるため、車体全体の品格といいますか、質感がとても高いです。
さりげなくULTEGRAコンポーネントが装着されているところもおしゃれです。
HAND MADE IN USAの文字が燦然と輝いています。
パーツ代、工賃を含めて、¥63,918(税込)となりました。
(なおパーツの互換性についてはSHIMANO互換表を見れば分かるものですが、今回は成立年代から逆算して推測する、という手法にしてあります。このほうがただの知識よりも汎用性が高いと言えましょう)
本日はこのあたりで宜しいと存じます。
それでは、皆様、次回お会いするときまで、ごきげんようです!!
以上、bikeport新宿都庁前店の奈須野でした。
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