皆様、こんにちは!!
Bikeportスタッフの奈須野です。
春の季節になりますと、通勤、通学のため、新しくスポーツバイクをお求めになる方が増えます。
そこで、本日はスポーツバイクの中で、特に人気の高い、GIANT Escape R3とRX3の共通点、異なる点についてお話致します。
1 共通点
(1) クロスバイクであること
クロスバイク、というのは実は和製英語でして、よく考えると意味のわからない言葉なのですが、日本の自転車業界ではスポーツバイクの総称として使われております。
厳密な定義は無いに等しいのですが、概ね、軽量な700Cホイール、タイヤを履いていること。
シティサイクルよりも多くのギアを備えていること。
シティサイクルよりも、前傾姿勢をとることが可能であること。
フラットバーであること。
などが要素となることが多いです。
Escape R3とRX3についてみますと、両車体とも上記の要件を備えており、いわゆるクロスバイクといえるでしょう。
このように、両車体ともクロスバイクであることが共通点です。
なお、余談ですが、北米、ヨーロッパなどでは、いわゆるクロスバイクのことは、ハイブリッド(Hybrid、混合種の意)と呼ばれることが多いです。
(2) GIANT製であること
Escape R3とRX3は両車体ともにGITNA製です。
そのため、価格対性能費が世界一と申し上げて良いほど優れていること、世界中に工場、法人を持っているため交換パーツの取り寄せが容易、安価で、維持費が安く済むこと、車体のクオリティが高いレベルで保たれていること、などが共通点です。
2 異なる点
(1) 乗車姿勢が異なる
R3のジオメトリは、一言で申せば、上体が起きて、のんびりゆったり走る方向性です。
それに対して、RX3のジオメトリは、前傾姿勢が強く、上半身のチカラをぐいぐいと使いやすいように設計されています。
詳しく見てみますと、例えば、R3のトップチューブ長(画像Cの部分)はSサイズ(適用身長目安160-175cm)で、545mmです。
これに対して、RX3のトップチューブ長は555mm。
同じSサイズでも、10mmもRX3の方が長いのです。
RX3のほうが、上半身がより前方に伸びる、つまり前傾姿勢が強いということです。
前傾姿勢が強いと何が起きるかといいますと、走行時の空気抵抗が減る、上半身のチカラを入れやすくなります。
つまり、RX3のほうがパワー重視、スピード重視という設計です。
(2) フロントフォークの形状が異なる
R3のフォークは、弓なりに湾曲していることでたわみやすくなり、路面からの衝撃吸収性を高めています。
RX3のフォークはストレートで、スポーツバイクとしてはむしろこちらが通常の形状ではありますが、ハンドリングが機敏になるという特徴があります。
もっとも、ハンドリングは機敏であることが良いか、というと必ずしもそうではなく、時速20km前後の街乗り走行といった、のんびり走行の場合は、ハンドルはそれほど切れないほうが走りやすい、直進安定性に優れる、という利点があります。
このように、R3は直進安定性、のんびり走行を念頭に置いていることが分かります。
これに対して、RX3は機敏性重視という設計です。
(3) シートステイの接合法が異なる
R3はトップチューブとシートステイ(サドル下とリアホイールをつなぐパイプ)の接合部分が、2cmほど下方にずれています。
これは、リアホイールからの突き上げを直接トップチューブに伝えないように、シートチューブをたわませることで、衝撃吸収性を高めるための工夫です。
これに対して、RX3は、トップチューブとシートステイが直結しています。
トップチューブをたわませる、衝撃吸収性を高めるというのは、裏を返せばライダーのパワーも逃げやすいということでして、RX3は速度重視、パワー重視として、トップチューブとシートステイを直結させています。
(もっとも、多くのロードバイクでは直結型が多数派でして、R3のようにずらしているのは、ロングライドモデルなど、特殊バイクな採用される機構です。)
これらの点からも、R3はゆったり型、RX3は高速型というのが分かります。
(4) フレームの形状が異なる
フロントフォーク以外のフレーム形状について見ますと、R3は真円に近い、丸いパイプを接合して形成されています。
これに対して、RX3はダウンチューブは極太といっていいくらい太く、トップチューブは前方は太いものの、サドル下にかけて弧を描きながら細くなっています。
特に、ボトムブラケット周りのボリュームが大きく異なります。
RX3のフレーム剛性はロードバイクに匹敵するほどの高さで、ペダリング時のエネルギーを効率よく前進に使うことができます。
もちろん、R3でも時速25kmくらいは優にでますし、少し頑張れば時速30kmを出すことも可能です。
これに対して、RX3であれば、より容易に高速走行が可能です。
フレーム剛性の差異はエネルギー効率の差となってくるため、長距離になればなるほどRX3の方が得意になっていきます。
例えば、走行距離30km以上を短時間で走る、といったロングライド用途ではRX3のほうが有利でしょう。
このように申し上げると、フレーム剛性は高ければ高いほど良いのか、ということになりますが、そうではありません。
高すぎるフレーム剛性は、路面からの衝撃がコンコンとライダーに伝わる、のんびり走るときには硬すぎて走りにくい(ある程度フレームがたわんだほうが、少ないパワーでもしなりを生かして走りやすい)のです。
比較的距離が短いのであればR3、長距離であればRX3のほうが走りやすい、という設計です。
(5) ハンドル、ヘッド周りが異なる
R3のハンドルは、直径25.4mm、2つのボルトで固定されています。
これに対して、RX3のハンドルは直径31.8mm、4つのボルトで固定されています。
R3のほうが細く、ボルト固定数も少ないため、たわみやすくなっています。
これは長所としては、ハンドルが適度にしなるため、路面からの衝撃を吸収してくれやすくなる、乗り味が優しくなる、ということです。
RX3の場合は、太いハンドルに、4つのボルトでガッチリとハンドルが固定されます。
これはロードバイクと同じ太さ、固定数でして、ロードバイク同様、上半身と腕のチカラを生かして、グイグイとペダリングするときに有利です。
乗り味は当然、硬くなります。
これらの点からも、R3がのんびり型、RX3が速度、パワー重視であることが分かります。
(6) ワイヤーの取り回しが異なる。
よーく見ると、R3のシフトワイヤーはダウンチューブの下を通っています。
これに対してRX3のシフトワイヤーはフレームの中を通っています。
R3は外装式、RX3は内装式というわけですが、それぞれの利点があります。
まず、外装式の利点しては、ケーブル交換をしやすいという点があります。
当店の場合は、ケーブル内装式、外装式で特に工賃に差異を設けておりませんが、ショップによっては、ケーブル内装式は作業難易度が上がるため、工賃が割増になることがあります。
また、ご自身でケーブル交換する場合には、かなり困難なモデルもありまして、その場合はショップ任せということになるでしょう。
外装式は、フレームの加工箇所が減るため、端的に言って製造時のコストダウンを図ることができます。
さらに、ケーブルの配線が直線的、素直であるため、変速の操作が軽くなる、という長所もあります。
これに対して、内装式の利点は、ケーブルが風雨にさらされる箇所が減るため、ケーブルが傷みにくいという点があります。
さらに、そんなに違うの!?と思われるかもしれませんが、ケーブルというのは出力にして数W分くらいの空気抵抗となりまして、エアロロードバイク等では極限までケーブルを露出させないのがセオリーとなっております。
RX3も可能な限りケーブルを内装することで、空気抵抗を低減させ、速度向上に貢献しているのです。
あと、個人的な価値観となりますが、ケーブルが露出していないため、バイクの外観がスッキリする、美しいという方もいます。
ケーブルの取り回しとしては、外装式、内装式のどちらが良いかは一概にいえません。
しかし、スポーツバイクとは速さを追求するものである、という思想からすれば、RX3の方が、よりスポーツバイクらしいといえるでしょう。
もっとも、外装式には製造、交換コスト低減という長所があるため、R3の外装という選択も合理性があります。
(7) フレームの素材が異なる
大まかに言えば、R3もRX3も軽量アルミクロスバイクです。
しかし、細かく見ていくと違いがあります。
まず、R3は、ALUXX-Gradeのアルミ合金です。
これに対して、RXは、ALUXX SL-Gradeのアルミ合金で、より軽量で、剛性の高いフレームを作ることができるのです。
RX3は、その分、価格的にはやや不利となります。
さらに、フロントフォークについてみると、R3は、クロムモリブデン鋼(いわゆるクロモリ)です。
クロモリは、アルミ合金よりも、しなるため、シティサイクルなどの一般車でよく採用されている合金です。
R3も路面からの衝撃を吸収すべく、フロントフォークはクロモリを採用しています。
重量としては、クロモリフォークはやや不利ですが、アルミよりも衝撃吸収性が高く、街乗り重視モデルであれば、恩恵が大きいといえるでしょう。
(8) タイヤの太さが異なる
R3は30mm、RX3は28mmのタイヤを履いています。
わずか2mmしか変わりませんが、タイヤというのは筒状であるため、直径が2mm増えることで内部のエアボリュームは15%ほど増えるのです。
エアボリュームが増えれば、その分だけ空気がクッションの働きをしてくれるため、衝撃を吸収しやすくなります。
それでは、タイヤは太ければ太いほどいいのかというと、そうではなく、衝撃吸収性が高いということは、すでに何回か言及しましたように、エネルギーロスということでもあるのです。
太いタイヤは急加速、急減速したときなど、クッション性の高さが邪魔をして、反応性が低くなります。
さらに、重量的にも不利。
スポーツバイクにおいてホイールの軽さというのは、最優先に近いくらい重要な要素ですが、太いタイヤは重く、中のチューブも太くなるため、この点でも重くなっていきます。
とはいえ、一般的なシティサイクルは38mmくらいの太さでして、それに比べるとR3は十分に細いです。
ホイールも一般車に比べると遥かに軽い。
RX3に比べると速度的には不利となりますが、快適性はR3のほうが上となります。
(9) フロントギア枚数が異なる
R3はフロントのギアが3枚。
R3はRX3よりも更に小さな3枚目を使うことが可能で、最小ギアにした場合は、時速4kmくらいしかでないほどの、軽いギアが搭載されています。
これは、初めてスポーツバイクに乗る方であっても、チカラを入れずに乗りやすいように、軽いギアも採用したのだと思われます。
もっとも、オンロードのスポーツバイクとしてはフロントは2枚というのが普通で、その理由は、スポーツバイクに乗るヒトというのは運動が好きで、ある程度はチカラもある、軽すぎるギアなど無用、そのようなものは省略したほうが軽量化につながる、ゆえに、フロントは2枚で十分、という発想でして、RX3はこのような考えに従い、フロントは2枚となっています。
R3とRX3のどちらが優れているかは一概には言えません。
のんびり型であれば軽いギアもあるR3、運動性重視であればRX3の2枚で十分、ということになるでしょう。
(10) カラーリングが異なる
R3はGIANTのライフスタイルカテゴリに属するバイクです。
これに対して、RX3はスポーツカテゴリに属しています。
R3のカラーリングは、レッドストーン、ブルートーンなど、彩度を落としたものとなっています。
街中を走る時に、鮮烈なカラーリング、ロゴがあると、周囲の風景から浮いてしまうこともあるでしょう。
また、やや地味なくらいのほうが、通勤、通学時の衣服とのバランスもとりやすいです。
これに対してRX3は、かなり自己主張の強いカラーリングです。
ブランドロゴもはっきり見えますし、イエローなどはスポーツバイクらしい、勢いを感じさせるカラーリングです。
(11) サドルが異なる
これまで述べてきましたように、R3のほうが上半身が起きる姿勢で乗車することになります。
そのため、比較的サドルに荷重がかかるため、スポーツバイクとしては幅広、かつクッション性の高いものが採用されています。
これに対して、RX3は薄い、硬いサドルが採用されています。
お尻が痛くなるのは嫌だから、サドルは柔らかいほうがいい!!と思われがちですが、これまた一概にはそうとは言えません。
というのも、クッショ性が高い、衝撃吸収性が良いということは、すなわち!!
パワーロスにつながるのです。
柔らかすぎるサドルは、ペダリング時のエネルギーを常にサドルが吸収しているようなもので、高速走行をするスポーツバイクのサドルはある程度硬いほうが良い。
そもそもスポーツバイクのサドルとは、座るものではなく、ハンドル、ペダル、サドルの3点で体重を支え、サドルには軽く腰掛ける程度である。
ゆえに、サドルは硬くて良い、というのがRX3の考え方です。
しかし!!
そうは言っても痛いものは痛い。
街乗りであれば、R3のほうが快適性は上でしょう。
高速走行、長距離走行をするのであれば、RX3のほうがエネルギー効率は良くなります。
(12) 車体重量が異なる
R3は10,7kg。
RX3は10.3kg。
RX3のほうが高剛性フレームを採用しながら、軽くなっているのは、アルミ合金のグレードが高いのと、フロントフォークの素材が異なるからです。
さらに、製造法も異なり、RX3のほうがコストのかかるハイドロフォーミングという製造法で作られています。
同じ剛性であれば軽いバイクのほうが優れている。
確かに、その通りです。
しかし、多くのシティサイクルの重量は18kgから20kgほどです。
両車体とも、シティサイクルの半分くらいの重量でありまして、十分に軽量といえましょう。
(13) 価格が異なる
そこが一番重要でしょう!!とご指摘を受けそうですが、R3は¥52,000(税抜)。
RX3は¥65,000(税抜)。
完全に同価格帯とはいえません。
とはいえ、両車両のどちらにしようか、迷うお客様が大変に多く、ゆえにこのような記事を書いた次第です。
3 結論
数々の点を挙げましたが、冒頭で述べましたとおり、街乗り、のんびり走行であればR3のほうが走りやすいです。
街中は交差点、信号が多く、頻繁に車体から乗り降りしなければなりません。
そのような環境では、上半身が起きるR3のほうが乗り降りが容易で、扱いやすいでしょう。
また、坂道が多い環境でも、R3の低ギア比は活躍します。
さらに、上半身が起きる姿勢では、ふかふかのサドルのほうが快適です。
もっとも、エネルギー効率という点では、RX3のほうが優れていて、長時間、長距離走行になればなるほど、RX3が有利になってきます。
さらに言えば、スポーツバイクというのは、乗っていて楽しいか、嬉しいか、というのも重要な要素でありまして、RX3のクイックな操作性、立ち上がりの鋭さ、踏み込んだときの加速性など、よりスポーツバイクらしい長所を備えています。
外観もRX3のほうがスポーティで、力強さを感じさせます。
そのようなスポーツ性能を重視するのであれば、RX3が良く、RX3であっても十分街乗りで活躍してくれます。
R3とRX3の相違点。
いかがでしたか。
ここでは挙げきれなかった相違点もあります。
bikeport横浜西口店では、R3、RX3の両車体とも、試乗車がありますから、実際にご試乗していただくのが早いかもしれません。
本日はこのあたりで宜しいと存じます。
それでは、皆様、次回お会いするときまで、ごきげんようです!!
以上、bikeportスタッフの奈須野でした。