皆様、こんにちは!!
bikeport新宿都庁前店の奈須野です。
ある日のことでした。
電動バイク MATEにお乗りのお客様からお問い合わせがありました。
ブログを見たのだが、油圧ディスクブレーキがどうにもうまく働かなくて、交換が可能なのか、というものでした。
当店では、MATEバイクの油圧ディスクブレーキ作業をしばしば承っております。
新宿都庁前店 / 電動自転車 MATE メイト / 油圧ディスクブレーキを大口径化、SHIMANO SLX、XTR化する
お客様に可能です、とお応え致しました。
(電動自転車によくある仕組みですが、総入れ替えをした場合、ブレーキレバーを握るとモーター出力が減る機構が働かなくなる、とお客様にご説明し、ご了承を得ております。)
お客様がおっしゃるには、詳しくないのでどうしたら良いか分からない、とのことでした。
自転車にお詳しくないお客様には、分かりやすいように、松竹梅のようなコースで作業内容をご案内することがあります。
私どもも、総額さえ決まってしまえば、あとは上限ギリギリまで合理的で効果的なパーツ選択をしていけば良いため、こういったご案内は助かるのです。
今回は、ざっくりと¥30,000、¥50,000、¥70,000前後で換装可能である、とお伝え致しました。
お客様にはあえて詳細を申し上げませんでしたが、¥30,000コースであれば、重要な部分にSHIMANO DEOREを使い、場合によってはSHIMANO ALIVIOでパーツ代を節約する(ALIVIOであっても、このようなことを申し上げることが十分失礼であることを認識しながら申し上げますと、安価な電動バイクに装着されているパーツよりはるかに高品質、高耐久です。)。
¥30,000であっても、劇的に制動力があがり、ご満足いただけると思います。
¥50,000コースはかなり充実していて、SHIMANO DEORE、SLXといったミドルグレード以上のパーツを使って、ピストン数も4ポッドといった強烈な制動力を持ったパーツ(油圧ディスクブレーキ本体(キャリパー)の内部には、パッドを抑えるピストンが装着されています。その数がエントリーグレード、あるいはロードバイクであれば2つが通常となります。しかし、ダウンヒルバイク、ハイエンドMTBにはピストンが4つのものが存在します。ピストン数が多いほど、広い面積でパッドを抑えることが可能であるため、制動力が飛躍的に上がるのです。当然ながら、通常使われる2ポッドよりも高価となります)の選択が可能になります。
¥70,000コースは、メインにSHIMANO SLX 4ポッドを使い、場合によっては、SHIMANO XTといったハイグレードのものも使用可能になります。ローターは203mmといった大口径のもの(直径が大きくなるほどお値段も上がります)を採用し、電動バイクに求められる性能としては最上位レベルの制動力が実現できます。
それ以上のご予算を頂いた場合は、もちろん作業可能でございますが、全てSHIMANO XT、XTRといったレースグレードのパーツを使うことになるでしょう。
お客様のご要望で、¥70,000の、高くても良いのでお願いしたい、とお返事を頂きまして、今回はいわゆる!?松コース(完全に余談となりますが、松竹梅と表現した場合、松が最上で、竹が真ん中くらい、梅がお手頃といった意味であります。)になったと言えましょう。
これだけ潤沢なご予算を頂いたので、選択の幅が豊富にあります。
ところで、上位グレードのパーツのどこが優れているかといいますと、まず、制動力の高さです。
制動力が高くなる秘訣としては、各パーツの精度、剛性が高くなるため、各部に圧力がかかってもパーツがしならない、たわまないからです。
次に、耐久度です。
酷使してもすぐにへたることがありません。
電動バイクのブレーキは、人力のパイクに比べて、圧倒的に高負荷であるため、パーツへのダメージが大きくなります。
上位グレードのパーツを使うことで、堅牢なブレーキシステムを構築することが可能になります。
そして、フィーリング、操作感、いわゆる官能性能です。
それが重要!?とお思いになるかもしれませんが、人間の手の感覚というのは非常に繊細です。
さわり心地が良い、引き心地が良い、というのは極めて主観的な問題でありますが、乗り手の心理、嬉しさに与える影響が大きく、決して無視できる要素ではないのです。
上位グレードのバイクは、このあたりの官能性能も重視しているため、触っていて上質感が得られるようになっています。
最後に、重量です。
上位グレードのパーツほど、スチールではなくアルミ、チタン合金、場合によってはカーボンを使って、1gでも軽量に仕上げてきます。
もちろん、電動バイクであれば出力に余裕があります。
しかし、たとえ電動バイクであっても、軽量であればバイクの挙動に余裕がでるため、軽量化というのは、無意味なチューンナップではありません。
パーツを発注、到着して、作業開始です!!
こちらが当初装着されていたブレーキレバー、キャリパー、ローターです。
まず、ブレーキシステムの基幹となるパーツには、贅沢にもSHIMANO SLX 4ポッドを採用しました。
レバーも当然ながらSLXです。
フロントには、当初160mmローターが装着されておりました。
これは若干の苦言になりますが、電動バイクには強烈な制動力が求められるのですから、もっと大口径のローターを標準で装備させるべきだと考えます。
しかし、多くの電動ブランド、メーカーは判で押したように160mmローターを使います。
その理由は、要するに安いからです。
160mmローターは互換ブランドからも大量生産されて、お値段が安くできるから採用しているに過ぎません(と勝手に推察します)。
SHIMANOであれば、140、160、180、203、220mmとローター経がラインナップされています。
140mmはロードバイク等に使うことがあります。それほど制動力を求められないバイク、とにかく軽量化を志向するバイクに採用されます。
160mmは上述しましたように、一番普及しているローター経です。クロスバイクではほぼ全てこのサイズになります。
180mmはクロスカントリー向けMTB、上りも下りもあるMTB等で採用されるローター経です。
203mmは強力な制動力が必要なバイクに採用されるもので、ダウンヒルMTB等に装着されます。
220mmローターは新しいラインナップで、ダウンヒル専用というくらい、素晴らしい制動力を発揮してくれます。
なお、ローター経が1サイズあっアップするこどに、制動力は10%ほど上がります。
160mmから203mmにサイズアップすると、27%ほどの制動力アップが期待できます。
どのローター経を使うか、ですが、自転車において強い制動力が発揮できるのはフロントです。
(リアはどれほど強力なブレーキを搭載したとしても、結局はタイヤをロックしてしまうため、極端に高い制動力は追求できません)
そのため、フロントには重点的に予算を割き、上質なパーツを使うことにします。
今回は、電動バイクで出力があるとはいえ、ダウンヒルまでの制動力は必要ないと判断し、203mmのローターを採用致しました。
(220mmローターでは、制動力の立ち上がり、最初の段階でも強烈なストッピングパワーが働き、車体の操作が難しくなると判断しました。)
ご予算を潤沢に頂いたため、泣く子も黙る最高級グレード SHIMANO XTR / DURE-ACE / SAINT(3コンポーネント共通という設定)のものを装着致します。
RT-MT905 ¥10,695(税込)です。
ローター1枚で、1万円超えとは、さすがXTR / DURE-ACE / SAINT様。
ひかえおろう、といった威厳があります。
ハイエンドで使われるローターは、走行スピード、負荷が高いため、とにかく制動時に熱を持ちます。
その熱が制動力を低下させるのです。
そのため、いかに放熱を促すか、というのがハイエンドパーツでは重要になってきます。
RT-MT905には、SHIMANO アイステクノロジー フリーザという技術が採用されています。
私は勝手にフリーザ様とお呼びしている仕組みなのですが、大きな放熱フィンを装着し、さらに表面には放熱効果の高い特殊塗料を塗布することで、単純なステンレス製220mmローターと比べて、制動時に100℃も温度低下させることに成功しました。
さすがフリーザ様。
標準では160mmローターが装着されているため、そのままでは203mmという大口径ローターを装着することはできません。
ローターの直径が大きくなる分、ブレーキ本体、パッドの当たる位置もホイールの外側にずれるからです。
今回は43mm直径が大きくなるため、その分だけアダプタを使ってブレーキ本体の位置を外側にセッティングします。
アダプタもSHIMANOから販売されています。
標準のブレーキレバー、キャリパーを取り除きます。
(本車体は、海外仕様と同じ、左レバーが前ブレーキを操作します)
SHIMANO SLXのブレーキレバーを装着します。
上質のクオリティです。
レバーの形も良いです。
フロントのブレーキホースは1000mmで足ります。
オイルを充填して、エア抜きをします。
泡がぷくぷくと上がってきます。
この作業をおろそかにすると、後々、ブレーキの効きが悪い、急にブレーキが効かなくなった、という状態になる可能性もあるため、丁寧に作業していきます。
アダプタを装着します。
古いローターを外します。
新しいローターです。
圧倒的な大きさと、質感の良さが漂っています。
(固定ボルトはまだ装着していません)
フロントホイールに装着します。
右ブレーキも同様に作業します。
標準で装着されているキャリパー、ローターです。
ブレーキレバーを外します。
キャリパーを外します。
新しいブレーキレバーを装着します。
新しいキャリパーを装着します。
エア抜きをします。
リアは特にホースが長く、空気が残存していることが多いため、入念にエア抜きをします。
ホースやキャリパーの方向を変えたり、こんこん優しく叩いたりしてエアを上に導きます。
新しいローターを装着します。
リアはあまり高い制動力をもたせるとホイールをロックしてしまい、スリップ、かえって危険であるため、160mmローターのままに致しました。
また、MATEバイクのチェーンステイにあまり余裕が無く、180mm以上のローターでは、チェーンステイに干渉する恐れ大であったため、この点からも160mmのままと致しました。
グレードはSLXに致しました。
XTRにしても良いのですが、価格差ほどの制動力アップにつながるか。。。前述しましたように、フロントへ予算を重点配分すべきと判断した次第です。
もちろん、標準装備のものよりも精度、耐久度が上がるようにしてあります。
ローターとパッドの当たりを調整します。
XTR、SLXという良いパーツを使っているため、当たり調整も非常に楽です。
作業完了です!!
お預かりをして、3日で作業完了となりました。
(今回は問屋さんの発送タイミングがちょうど良い具合に即日であったのと、店内作業に余裕があったため、短時間で終わらせることができました)。
フロント203mmのXTRローターが圧倒的な存在感を放っています。
パーツ代、工賃を含めて、¥76,830(税込)となりました。
やはりこれだけの予算をいただけると、贅沢なパーツ選定が可能になります。
お客様には、タイヤロックの危険性を十分にお伝えして、お返し致しました。
本日はこのあたりで宜しいと存じます。
それでは、皆様、次回お会いするときまで、ごきげんようです!!
以上、bikeport新宿都庁前店の奈須野でした。
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