皆さんこんにちは。
bikeport小林です。

今回はタイトルにもあるようにbikeport史上最年少のライダーへ最大級のダウンヒルバイクを納車するまで?いや…
世界チャンピオンになるまでのお話です。
2024モデル GIANT GLORY ADVANCED FRAME SET ( ジャイアント グローリー アドバンスド フレームセット )展示中!実車が見れます!
GLORYについては前回のブログでご紹介させていただいておりますのでぜひ一度ご一読くださいね。
遡ること2年、私は小学5年生(身長130〜になったばかりの少年に、GTの26インチバイクを販売しました。
普段はトレイルアドベンチャーのような、トレイル系のパークへ毎週のように通うMTBに乗るのが大好きな少年(らいこう選手)です。

GTのSTOMPER26は20万円台で購入できる非常にコストパフォーマンスの良いバイクでしたが、しばらく経つと各部のがたつきやゆるみ、消耗品の損耗具合を毎回のメンテナンスで診断すると、バイクのパフォーマンス限界まで使っていることがすぐにわかり、購入して半年も経たずサスペンションの交換を相談されました。
元々搭載されていたSUNTOURのサスペンションでは不満を感じるとのこと。確かに標準仕様のサスペンションでは固かったりするんだろうなということで「コンプレッション(縮む方向)ダイアルやエア圧の調整でもう少しなんとかできるよね」と調整でしばらく様子を見てみることに。
もちろんサスペンションの交換は可能ですが、最近ではサスペンションもトップモデルは15万円近くしますし、中堅のグレードも6万円程度するために、親御さんに「じゃあサスペンション交換しましょうか」とおいそれと提案できません。
しかし度々メンテナンスに来店するらいこう君から話を聞いていると、的確にサスペンションの挙動に対する不満を述べるので、これは単純な不満ではないことに気づきました。大人が良いサスペンションを使ってるから自分もほしいという具合ではないのです。
らいこう君が言うには『路面に追従する設定にすると、ジャンプやドロップの際にボトムアウトしかけてしまい、逆にジャンプの方に設定を寄せると、ライディング中の追従性が悪くなる』とのことでした。
当たり前のことかと思うかもしれませんが、ここまで具体的に説明できる11歳はそうそういません。
単に遊びで使う分にはそもそも気にならないはずです。
この問題を解決するには、悪路を走行中のサスペンションの制御(ロースピードコンプレッション)と大きい動き、つまりジャンプやドロップでの大きくストロークする際のの制御(ハイスピードコンプレッション)をそれぞれ独立して制御できるダンパーが必要なのです。

多くのサスペンションはコンプレッション側(縮む制御)は1系統。ハイ・ローで別れていないので大まかな調整しかできないのです。ただ調整は容易なのでメーカーの推奨設定を忠実に守れば80点以上の性能は約束されます。一方2系統ダイアルがついているサスペンションは、2系統ある分調整は難しいですが十分理解して設定すれば先述した路面追従の制御、ジャンプやドロップの制御をそれぞれ独立してコントロールが可能となり適切に制御すれば100%以上の性能を発揮しますが、誤った設定をすればライディングの質を大幅に下げかねません。

つまるところ2系統制御できるサスペンションが必要ということになり、トレイル系サスペンションで当店でも人気のある『DVO SAPPHIRE D1』へアップデートしました。その後ダウンヒルシリーズでは富士見パノラマ、SRAMパーク、白馬で表彰台にのり好成績を納めてくれました。
1年半も経つとGTリアサスペンション、厳密にはリアのリンクが限界を迎えます。カッティーズなどのリアを滑らす動きや、レースでの激しい挙動にマシンスペックがついてこず、不安定な挙動になっていたのです。
リアサスペンションを変える、リンクをばらしてオーバーホールする選択肢も当然ありましたが、これは摩耗どうこうではなく、構造上いまのライディングに性能負けしている状態だと判断しました。
これにより昨年辺りから新しい車体の構想があがりはじめ、バイクを何にするか。という問題になりました。
今も持っているトレイルバイクはそのままで、別カテゴリーのバイクを新たに用意し使い分けるのか。
同じカテゴリー(トレイルバイク)で成人用モデルを組むのか。
身長140cmの12歳に何が最適なのか。
本人としてはダウンヒルシリーズで12歳からは大人と同じカテゴリーになるので『勝っていきたい』という強い想いがありました。

REIGN

TRANCE X
GIANTのREIGN(エンデューロバイク)やTRANCE(オールマウンテンバイク)も候補に挙がります。トレイルアドベンチャーでも使えてダウンヒルシリーズでもそれなり戦える一台が良いのか。これから身長が伸びていき、すぐサイズも変わってしまうかもしれないのに高価なバイクに投資するべきなのか。
私には答えが出せませんでした。

GLORY ADVANCED
様々な葛藤を抱きながら、ひとまず3月にTRANCE , REIGN , GLORY(ダウンヒルバイク)の3車種の乗り比べをフォレストバイクで実施しました。
私は恐らくトレイルアドベンチャーやダウンヒルシリーズで兼用で使えるTRANCEかREIGNあたりになるのではないかと思っていましたが、悩んでいたのが何だったのかと思うほど、結論は明確ですぐにでました。

TRANCE 、REIGNに何度か跨がり、最後にGLORYにたった2回乗っただけで「これだ!これがいい」と彼は言うのです。
「これ以外は考えられない。」

ライディングを見ても他のどのバイクよりダウンヒルバイクは大きいにも関わらず、楽しそうに自由自在に操るのです。それだけ今期のGLORY ADVANCEDがトレイルも走れてしまう凄まじい性能ということも頷けるのですが、一発で答えが見つかってしまい私としても喜ばしいことでした。
さらに今後の運用でワイドレシオやドロッパーシートポストを除いてでもこれが良いということだったので、12歳の彼から並々ならぬ気迫を感じ、bikeport史上最年少のダウンヒルライダーに最大級のダウンヒルバイクビルドプロジェクトが始動しました。
【バイクビルド編へ続く】



