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新宿都庁前店 カーボンロードバイク GIANT LIV LANGMA / SHIMANO純正パーツでギア比を1より下げる / その1 パーツ選定

皆様、こんにちは!!
bikeport新宿都庁前店の奈須野です。

ある日のことでした。
常連のI様よりご相談があり、車体をお預かり致しました。
登り坂がしんどいので、なんとかしてほしい。
手段はお任せする、というものでした。

ヒルクライムを楽にするためには

1 出力、心肺能力を上げる
2 車体重量、ライダーの重量を減らす
3 ギア比を下げる
ことが有効でしょう。

まず、1 出力、心肺能力を上げるでありますが、ご相談くださったI様は女性で、いきなりハードトレーニングを強要するのは難しいでしょう。
それに、1 出力、心肺能力を上げるという解決策であれば、そもそも車体をお預けにはならないでしょう。

次に、2 車体重量、ライダーの重量を減らす、でありますが、I様がお使いの車体は既にフルカーボン、ホイールもカーボンディープリムホイールで、もちろんこれ以上の軽量化は不可能ではありませんが、膨大な金額が必要になるでしょう。
ライダーの重量につきましては、私は口が避けても申し上げられないため、検討の対象外と致します。

最後に、3 ギア比を下げる、という方法があります。
これは、速度は下がるものの、身体に対する負荷を軽くする、という手法です。
やはり、これしかありせん。
ギア比を下げるには、
1 フロントチェーンリングを小さくする
2 リアスプロケットを大きくする
3 (変則的な解決方法になりますが)タイヤ、ホイールの直径を小さくする

というものがあります。
3 タイヤ、ホイールの直径を小さくすれば、クランクを一回転させたときに進む距離が減るため、実質的にギア比が下がることになるのです。
とはいえ、既に700Cホイールをお使いで、タイヤを細いものにすれば、わずかながらホイール直径を小さくできるものの、グリップ力、クッション性が下がるといったデメリットの方が大きいため、この方法は検討の対象外とします。

そこで、1と2、あるいはその両方を採用します。

フロントチェーンリングを小さくする フロント3枚作戦

フロントチェーンリングを既に装着しているものよりも、小さくすれば良いのです。
I様がお使いのコンポーネントは、SHIMANO TIAGRA 4700系で、現在は50/34Tのものが装着されております。

アウターを46Tにすることは可能ですが、インナーは34Tのものが最小で、SHIMANOはこれ以上小さいチェーンリングを展開していません。

より小さいチェーンリングを使おうとすれば、フロント3枚のTiagraに交換することです。
これであれば、50/39/30Tというラインナップが存在します。

画像引用 SHIMANO

しかし!!
この方法を採用したとすれば、STIレバーを2速から3速用に変更しなければいけません。
また、フロントディレイラーも当然ながら交換が必要です。
さらに!!
チェーンリングが一枚増え、さらにクランクセット全体のボリュームが増すために、重量が300gほど増えます。
登り坂を楽にするためのカスタマイズで、ギア比は下がったけど車体は重くなった、というのは、なんとも残念な気分になります。
そこで、フロント3枚作戦は見送りました。

また、(個人的には)ロードバイクでは重要と考えております、Qファクターがフロント2枚であれば150mmであるのに対して、3枚クランクセットにした場合、156mmと、6mmも広がります。
I様は女性で、あまり身長のある方ではありませんから、当然ながら、あんよの長さも長いとはいえず、そのような方向けのクランクセットで6mmもQファクターが広がるのは、ぐぐっと足を広げなければならず、違和感をお感じになるだろうと考えました。
この点からも、フロント3枚は採用できない、と判断しました。

ところで、Qファクターとは、右クランクと左クランクの一番外側の幅、ペダル取付面までの距離のことを指します。
Qファクターが広いほど足を踏ん張ったような形でペダリングをします。
ロードバイクの場合、空気抵抗の低減が至上命題であるため、Qファクターは狭めにすることが好まれるでしょう。

なお、さらに余談になりますが、QファクターのQとは、英語表現で、アヒルさんの鳴き声をquack quackと表記することに由来します。
Qファクターが広がるほど、足が広がり、アヒルさんのような歩き方になるから、ということでしょう。


画像引用 wikipedia

フロントチェーンリングを小さくする MTBクランクセット

フロント2枚のままで、チェーンリングを小さくするためには、PCD110mm(チェーンリング固定ボルトの仮想直径)を放棄するしかありません。
SHIMANOのロードバイク系コンポーネントは、全てPCDが110であるため、ロードバイク系コンポーネント以外から探すことになります。

ホローテックIIを採用し、PCDが小さいもの、単純に考えればMTB系のクランクセットであります。
しかし、Qファクターがあまりにも広がりすぎることと(例えばSLX ホローテック II MTB クランクセットはQファクターが178mmもあります)、またチェーンラインがロードバイクのフレームとズレすぎるため、チェーン脱落が頻発するでしょう。
また、チェーンが常に斜めにあたっている状態が続くため、チェーン、チェーンリング、カセットスプロケットが偏摩耗して、パーツの寿命も短くなるでしょう。

フロントチェーンリングを小さくする GRXクランクセット

そうだとすれば、ロードバイク系コンポーネントとの互換性がかなりあって、MTB的な性能も備えているコンポーネント、つまりGRXの出番となります。
幸い、GRXは10速版もラインナップにあるため、交換パーツを最小限に抑えることが可能です。
GRX FC-RX600-10を使うことにします。
フロント46T/30Tのものが利用できます。
Qファクターは151mmで、換装前のTiagraよりも1mm広がっておりますが、片側0.5mmということで、このくらいであれば問題ない、と致します。


画像引用 SHIMANO

なお、現在のギア構成はフロント50/34T、リア11-13-15-17-19-21-23-26-30-34Tです。
ギア比は標準で軽い方から、
1
1.13
1.31
となっています。

これが、フロントを34Tから30Tにすることで、
0.88
1
1.15
まで下がります。
ちょうど、ギア1枚分くらい余裕ができました。

リアスプロケットの巨大化 社外製品の使用 魔改造

このままお返ししてもよろしいのでありますが、今回のご依頼は全委任、よきにはからえ、というものでありますから、クランクセットを替えました、だけではなんとも芸がありません。
そこで、リアスプロケットも巨大化することに致しました。

当然ながら標準のTiagraリアディレイラーでは34Tより大きいスプロケットを操作することはできません。
もちろん、社外製の改造パーツを使えば、動作させることは不可能ではありません。
しかし、このような強引な手法の場合、変速性能が落ち、トータルキャパシティを超える組み合わせが生じ得ます。
変速性能の低下はまだ良いとしても、トータルキャパシティが超えている場合、ディレイラーがもげる、チェーンが切れるという恐ろしい事態に陥ることもあります。
(私、奈須野のプライベート車体では、このような魔改造をしているものが2台あります。)

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リアスプロケットの巨大化 GRXリアディレイラー

しかし!!
お客様の車体で、しかも女性の車体にこのような魔改造をすることはできない、天罰を食らってしまうと判断致しまして、リアディレイラーも交換することに致しました。
幸い、Tiagra10速とGRX10速は互換性があるため、GRXのリアディレイラーに換装します。
これで、36Tまで操作が可能になります。


画像引用 SHIMANO

リアスプロケットを36Tにすることで、ギア比は軽い方から
0.83
0.94
1.07
まで下がります。
クランクセットだけ交換した場合に比べて、さらに5%近く下がりました。
これで、トータル17%ギア比が下がります。
これは、軽いギアが1.5枚増えたのに近い感覚です。

これでよろしい。
SHIMANO純正パーツで、パーツ交換を最小限にして選ぶのであればこれが最適解と考えます。

パーツ選定は終わりました。
発注をして、いよいよ取り付けです。


本日はこのあたりで宜しいと存じます。
それでは、皆様、次回お会いするときまで、ごきげんようです!!
以上、bikeport新宿都庁前店の奈須野でした。

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